文書作成日:2019/11/20


 今回は相談事例を通じて、相続欠格についてご紹介します。



 父は生前、「お前には世話になっているから、万が一の事があった時に財産の大半を渡すよう、遺言を書いておくからね。」と私に話をしておりました。先週父が亡くなりましたので、遺言を探したところ見つかりませんでした。しかし、遺産分割の協議を進める中で、兄が父の言っていた通りの遺言を隠していたことが判明したのです。そんな兄と、遺産分割をしなければならないでしょうか?




 民法は、相続に際して被相続人や他の相続人に対し非行を働く者に対し、その者の相続資格を当然に失わせる制度を規定しています。その制度を「相続欠格」といい、相続欠格に該当する事由を「欠格事由」といいます。被相続人の遺言を隠す行為は欠格事由に含まれますので、お兄様は相続権を失い、相続人として遺産分割を行うことはできないものと考えられます。




 相続欠格は、大きく「被相続人又は他の相続人の生命に対する侵害行為」と「被相続人の遺言に対する侵害行為」の2つに分けられます。


◆「相続人又は他の相続人の生命に対する侵害行為」

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者(民法891条1号)

  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。(民法891条2号)

◆「被相続人の遺言に関する侵害行為」
  1. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者(民法891条3号)

  2. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者(民法891条4号)

  3. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者(民法891条5号)

 なお、遺言に関する侵害行為では、相続欠格となるのはその侵害行為が自己の利益のためになされたものである場合であり、その行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは相続欠格には当たらないとされています(平成9年1月28日最高裁判決)。

 相続欠格に該当すると、相続人の立場を当然に失い、相続開始の時から相続人ではなかったものとなります。そのため、事後的に相続欠格に該当した場合、その間になされた遺産分割協議は無効です。
 ただし、その者に子がいるときは、その子が代襲相続人となり、遺産分割協議に加わることとなります。

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