文書作成日:2019/04/15


 歯科医院では、補綴で金銀パラジウム合金や純金(以下、金パラ等)を取扱うケースがあるかと思います。このようなときに、歯科用金属として仕入れる場合の他、患者から回収した金パラ等を業者に買い取ってもらうこともあります。
 このような金パラ等に関する取引について、平成31年度税制改正により改正されました。確認しましょう。


 税制改正の内容の前に、まずは国内の金地金に関する現状の問題からみていきます。


1.金地金の密輸入

 現状、日本における問題の1つに、消費税の脱税を目的とした“金地金の密輸入”の急増があります。そのスキーム図は以下のとおりです。


 これは本来、輸入時にかかってくる消費税を密輸入する(輸入申告をしない)ことで、消費税を負担しない(脱税する)一方で、実際の売却時には消費税分を上乗せして代金を受け取ります(上記スキーム図@)。

 税率が高いほど脱税額は大きくなることから、特に消費税率8%となった翌年の2015年以降、密輸入の摘発件数・押収量が急増しています。
 直近の2018年での押収量は2,119Kgと、前年の6,277Kgに比して約65%の減少となったものの、摘発件数は1,088件と、前年の1,347件から押収量ほどの減少にはなっていません。また、押収量2,000Kg台は2015年からで、それ以前は1,000Kgにも満たない押収量であったことを踏まえれば、依然として高水準であることに変わりありません。

 また、最終的な国内の買い手である商社は輸出をすることで、商社自身も輸出免税(消費税率0%課税)により、負担した消費税分の還付を受けることができます(上記スキーム図A)。

 つまり商社は、国内販売であれば当然かかってくる消費税を、輸出をすることで実質かかることなく、さらに負担した消費税を仕入税額控除として差引く(還付を受ける)ことができるわけです。ですから商社としては、なるべく輸出したい、という心理が働きます。


 この心理を如実に表しているのが、右のグラフです。これは、金の輸出入の推移グラフです。輸入量に反比例するように輸出用が2015年以降急増しています。


 税関の摘発が氷山の一角と考えれば、取引数、ひいては輸出量の急増も納得できるのではないでしょうか。


2.金地金の密輸入への対策

 この密輸入に関して国は対策を講じています。その1つが、2018年4月10日に施行された、関税・消費税の罰則強化です。


 このような罰則強化を行った上で、さらに平成31年度税制改正では、消費税について改正されることとなりました。


 平成31年度税制改正では、消費税の計算上、仕入税額控除の適用を行う際の規定が追加されました。具体的には、次の2点です。

  1. 2019年4月1日以後、密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除制度の適用を認めない。
  2. 2019年10月1日以後、金又は白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を仕入税額控除の要件に加える。

 特に上記2.は、消費税率が10%へと引上げられる、10月1日以降の取引に対応するために設けられたとされています。これは密輸入に関係なく、すべての金地金の取引が該当します。

 つまり、冒頭の金パラ等の取引に関して、今年の10月1日以降、本人確認書類の写しのやりとりが発生することとなります。

 たとえ、ドクター自身が消費税の免税事業者であるために、仕入税額控除の適用は関係ない、としたとしても、少なくとも業者へ買い取ってもらう際に本人確認書類の写しを相手業者へ渡す必要がある、ということになります。

 取引が頻繁に発生する先からは、今後案内等があるかと思いますが、特に10月1日以降の取引に関して、ご留意ください。


 なお、上記の他、情報照会手続きの整備の改正もあわせて行われています。こちらは国税局等が情報収集しやすくするため、一定の取引に関する情報照会手続きについて法令上明確化等したものです。国税局等からの求めに応じない場合の罰則もありますので、こちらもご留意ください。


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